令和7年度広野AIR「高倉山」に多数のご応募ありがとうございました。
審査プロセスを公開出来る範囲でご説明します。
履歴点CV
全ての応募者は一次審査においてアーティストとしての履歴を共通の数式で数値化されています。「どれだけ長期間、粘り強く活動しているか、あるいは直近の数年間で爆発的に活動を増やしているか」を客観的に数値化するもので、この数式は広野町での現代アート公募のたびに仕組みを改良しています。
この数式では活動年数、展覧会件数、個展加点、受賞加点、学位加点、国際比率補正といった数値を算出しています。
計算の最終部分は以下のようになっています。密度スコアで用いられるBは活動年数ですが、これで単純に割ってしまうと活動年数の長い人が不利になりがち(長いキャリアの中で思うように活動出来ない時期が発生する)なので、平方根を使っています。
- 国際比率補正
展覧会のうち国外開催の割合を R_exh とする。
受賞歴のうち国外での受賞の割合を R_aw とする。
以下の補正を加える:
A′ = A × (1 + 0.5 × R_exh) C′ = C × (1 + 0.5 × R_exh) E′ = E × (1 + 0.5 × R_aw) - 密度スコア(Density)
Density = (A′ + C′ + E′) ÷ √(B + 1) - 最終スコア(Final Score)
CV = Density + D
履歴点補正M
「応募書類に不備やチート行為が無いか」「広野町との今後の関わりの見通しの具体性、これまでの関わりの厚みはどの程度あるか」「ウェブでの情報発信は十分か」の三つの観点で、それぞれに対し係数をCVにかけます。評価基準はルーブリックとして明確に記述されています。この補正係数をMとします。
審査員点J
審査員の合計は8人・組です。したがってアーティストが全員から満点をもらったときの得点は40点です。最低点は8点です。応募者の年齢と性別とヘッドショットは情報として事務局は持っていませんが、更に名前と履歴も伏せて、アーティスト・ステートメント、ポートフォリオ、滞在制作企画書、広野町についてのエッセイの四つの資料だけで判断していただくことになっています。
応募書類中にアーティスト名がわかるような部分があった場合には事務局がマスキング処理をしています。(ポートフォリオの作品画像にアーティスト名が書き込まれているなど)
審査員点の合計をJとします。
履歴点のスケーリングw
履歴点は理論上、上限がありませんので、突出した履歴を持つ応募者がいた場合、何も操作を加えないと審査員点が最低の8点でも招聘決定となってしまいます。言い換えると、審査員による審査の意味が無くなってしまいます。そこで今回は履歴点に一律でかける係数wを別途算出し、これを用いることで履歴点と審査員点のバランスを取るスケーリングを実施しています。
目標としては「履歴点で2位(招待圏内)でなおかつ審査員の評価が中間である候補者と、履歴点で最後尾に近いけれども審査員の評価が平均して極めて高い候補者が、ゴールライン直前で並ぶ」ような状況を念頭に設計しています。
点数算出方法
最終点数=J+wCVM
招待アーティスト決定方法
上記数式の上位3人を招待候補として最終的な意思確認を行います。
(以上)